映画『死霊のはらわた』血の雨

映画『死霊のはらわた』(2013) 必然性の高い暴力が若者たちを襲う!

新しい『死霊のはらわた』は、オリジナルよりシリアスで説得力のある舞台設定

こんばんは、今回はスプラッタホラーの金字塔、サム・ライミ監督の1981年映画『死霊のはらわた』(原題: The Evil Dead)のリメイク、 フェデ・アルバレス監督の『死霊のはらわた』(原題: Evil Dead)の感想です1。フェデ・アルバレス監督は最近で言うとどっちが悪人だかわからないけどやっぱりおじいさんが超狂ってた『ドント・ブリーズ』(2016年)の監督なんですね。続編もアナウンスされているので、また戦闘力高い盲目おじいさんが見られるかと思うと今から楽しみです。

もともとの『死霊のはらわた』は結構コメディタッチといいますか、ゴア表現がやりすぎて笑える、みたいな作品で、その後のシリーズも観客が笑ってツッコみながら見るようなタイプのホラーなのですが、この新しい『死霊のはらわた』は素直に怖いと思える映画でした。

 

映画『死霊のはらわた』 左腕を悪霊に侵食された女と、電動クッキングナイフ
作中に丁寧に配置された小道具が活用されるゴア表現も特徴的です。

 

まず設定の段階から刷新していて、主人公のミアが麻薬中毒患者で、その断薬リハビリの荒療治のために山ごもりする、という設定に改められています。これのお陰で、よくホラーである「なんで君たちそんなところに泊まろうと思ったん?」って疑問が軽減されるので、安心して襲われる若者たちに感情移入できます。ミアがどんなに必死に森を出ようと説得しても、友達として治療のために心を鬼にして彼女を閉じ込めるという、信じてもらえない絶望感と信じてあげられない辛さが悲壮感を増しています。漫画『殺し屋1』2で垣原も言っていたように、暴力をエンターテイメントとして享受するには『必然性』が大切ですよね。やられるために設定された舞台にやられるために投入されたキャラクターがほぼ無抵抗にやらてもいまいち盛り上がれないので、その点本作は登場人物たち全員頭が良くてその時々の最善っぽい行動をしてくれるストレスフリー設計。時にはやりすぎなくらいの生存戦略をとるくらいに生きようとするので、とても痛々しくて良いです。そもそも悪霊を呼び寄せてしまった原因が封じ込められていた本への好奇心なのですが、隠されていた召喚の呪文を見つけ出す方法が偏差値高めです。

 

映画『死霊のはらわた』"LEAVE THIS BOOK ALONE" と書かれた魔導書
つい読みたくなってしまうのも分かる気がします。

 

スプラッター映画に笑いを求めるのか、ゴア表現の追求を求めるのかで好みは別れてしまうかもしれません。ただリメイクが原作を超えることは無い、みたいな風潮がある中でこれは原作ファンでも楽しめる正統なアップデート版だと思いました。CGをなるべく使わない目を背けたくなるほどのこだわった痛々しいゴア表現3や、ちょっとおかしい大量吐血、原作シリーズへのオマージュなどもふんだんに盛り込まれているようで、過去作を見直したくなる愛のある作品です。

また監督のフェデ・アルバレスは本作が初のフィーチャー映画だそうです。YouTubeに短編映画を投稿していた監督がこうして過去の名作リメイクに抜擢されてその後も新鋭のホラー映画監督として活躍するというのはなんだか夢があって良いですね。カニエ・ウェストに紹介され、それからハリウッドのプロダクションから大量のオファーが届いたそうです。低予算からカルト的人気を獲得した『死霊のはらわた』のリメイクにふさわしいエピソードじゃないでしょうか。

 

フェデ・アルバレス監督”Ataque de Pánico!” きっかけとなったこの作品は300ドル(大体3万円強)で作ったとのこと。

 

映画『死霊のはらわた』のポスター

『死霊のはらわた』(原題: Evil Dead)

2013年公開

監督 フェデ・アルバレス

脚本

フェデ・アルバレス

ロド・サヤゲス

サム・ライミ

ディアブロ・コーディ

 

 

  1. 『ソーシャル・ネットワーク』でもFacebookも最初は The Facebook にしようとしている描写がありましたし、定冠詞を取るのがモダンな感覚なんでしょうか。
  2. 山本英夫氏の漫画。ドMのヤクザとドSの元いじめられっ子が殺し合う、暴力漫画の傑作。オススメしたいけどオススメしたら人間性を疑われる本棚に置いておきたくない漫画No.1
  3. 個人的には本に描かれていた挿絵を見た後の、浴室でのギコギコ……が一番怖かったです。

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