映画『メイ』(2002) 美しい部分だけ掻き集めた血肉のパッチワーク

子供が仮装してご近所を回るハロウィンを逆に知らないです。

かつてアメリカにいた頃のハロウィンも若者たちの仮装どんちゃん騒ぎだったので、特に日本都内のハロウィンがガラパゴス化しているとは思いません1。小さい頃に自治会で教わったハロウィンはただ単に集会所でお菓子を渡されるそっけないものでしたから、子供に戻れるなら由緒正しいお菓子を求めて友達とご近所を練り歩くハロウィンを経験してみたいものです。もしかしたら近年のハロウィンブームも子供の頃お菓子を貰い損ねた人々が欠けてしまった少年時代を補完するために行っていて、今まで溜め込んだ「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ」の精神を集団で有言実行した結果なのかもしれませんね2

そんなわけでハロウィンといえばホラー映画。今晩は『メイ』を紹介したいと思います。

 

メイと人形

この写真に映る主人公メイ(アンジェラ・ベティス演)と古めかしい人形のビジュアルに惹かれるものがある方にはおすすめできる映画だと思います。あらすじとしては、人と関わることが不得意なメイが社会に交わろうと努めながらもなんやかんやあって心を壊され、得意の裁縫技術でもって完璧な人形を作ることを決意するという話です。好きだった人たちの好きなパーツを使って。

本作をホラーたらしめる「人体のパーツを使って人形を作る女」という部分は隠されることなくあらゆる紹介文に書かれているので、この痛々しく可哀想な主人公がどのようにしてサイコキラーと化すのか、そしてどのような結末を迎えるのかを想像しながら観ることになるでしょう。主人公がキラーであるということから、観客側が感情移入できるかで評価が分かれる映画だと思いますが、その点本作のアンジェラ・ベティスの演技は言葉少なにもメイの心の動きを豊かに表現しているので、つい応援したくなる魅力があります。行為自体は結構なスプラッターながらも映画の感想の総評として「切ない」というワードが選ばれるのもうなずけます。

以下ネタバレ

 

メイはハロウィンの夜、人形の服を着てパーツ集めへと向かう

メイは幼い頃に斜視の治療のために眼帯をしており、それでいじめられたのが現在の性格の引き金となっていました。つまりは彼女の片目は彼女にとって不完全さ・醜さの象徴であったはずです。それを人の良い部分を掻き集めた人形に与えることで人形が「完成する」というのはなんだか寓意的でした。人には良い部分もあるが総合として見たら醜い部分が勝る、だから良いところだけを切り取って集めることで完璧な友達を生み出そうというのがメイの動機だったのですが、それが最後の最後で覆されてしまうのです。良い面だけを集めても肉塊でしかないそれに命を吹き込んだのは不完全さ。何もかも手遅れになった中、それに気づいたからこそ人形はメイを優しく慰めてくれたのだと思います。それが痛みの中の幻想だったとしても。

 

『メイ』(原題: May)

2002年公開

監督・脚本 ラッキー・マッキー

出演

アンジェラ・ベティス

ジェレミー・シスト

アンナ・ファリス

 

 

 

  1. 追記: 大人の仮装パーティーと化しているという点で。ただしアメリカは屋外での飲酒は年齢関係なく法律で禁止されており、路上で泥酔していると補導対象なので、お祭りに対する前提環境は大きく異なります。
  2. 車両を横転させたり痴漢するのはいたずらではなく犯罪です。

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