各地で油絵を描きつつ、何も知らない観光客に売りつけながら世界一周するのが私の夢です。
今は先立つものが無く現実逃避に近い妄想計画なのですが、携帯イーゼルと油絵の具を友に風景画や風俗画を描きながらユーラシア大陸を西へと横断する旅行を30歳までにはしておきたいなと思っています。美術館とかで絵を見ると思うんですよ。別に絵画を学校で学んだだとか、その時代で一番写実的な絵が描けるとかじゃなくても、世界中に大量にばらまいておけば一枚くらい物好きな人が大切に保管してくれるんじゃないかって。落書きでも100年残れば何かしら価値のあるものになるはずなんです。もちろんせっかく旅に出て描きたい物を見つけた時に上手く描けないっていうのはもったいないので練習はしてますけど。なんで油絵かって言うと中学の頃美術部で使ったことがあるというのと、保存性がそれなりに高そうっていうイメージからです1。映像も大好きなんですが、できて200年足らずの技術で再生手段がすぐに変わっちゃう不安定さがありますから、その点絵画や彫刻は人類が光で世界を知覚する機能を採用し続ける限りは見られるので安心です2。
そういうわけで今夜は計画を立てるにあたってまず必要となるもの、「地図」についてです。私の旅人プレイは特にテクノロジー縛りをする予定は無いので今回の記事はネタバレ注意です。

現在知られている中で最古の世界地図は紀元前600年頃のバビロニアの世界地図だそうです(上の画像)。北を上としてバビロニアを中心に円状に広がっていく世界観で、二重の円の間が海、その外側は想像上の大陸を描いているとのこと。現代の感覚からしたらこれを世界だと思っているなんて情弱乙って感じるかもしれませんが、私は今でもシンパシー感じます。私にとっての地図を記述するなら、ベッドをを中心に広大な6畳のリビングを抜け、転がった靴の山脈を超えてようやく玄関に辿り着くとあとは数百歩でたどり着けるスーパーと山手線で繋がる会社と友達の家、それから遠方に存在するという実家のマンション、それで完成です。私の世界感覚は古代人と大差ないどころかより狭いですね。

記録されている中で2017年12月までに宇宙に行った人間は計557人。それ以外の人間は直接地球を見たことはなく、古今東西集められたデータを元に出力されたものを見る他にありません。その上地球が球形であるがために、平面の媒体で全てを俯瞰するには本来のあり方を歪める必要があるのです。例えば今日もっともポピュラーな投射方法であるメルカトル図法は、経線と緯線の直角を維持するため本来北極と南極に近づくにつれ短くなる緯線を赤道の長さと等しく引き伸ばす必要があり、結果高緯度の地域は引き伸ばされて描かれています。

一方で2016年にグッドデザイン大賞を取った日本発の新しい図法「オーサグラフ」3は少ない歪みで表現できる投影法で、これを見るとロシアは相変わらずでかいがグリーンランドや南極大陸は思っていたより小さいということ、日本は思っていたより小さくないということがわかります。面積比率が正しいとかそういうテクニカルな凄さもあるんでしょうが、なにより地図の表現方法一つで世界の形は大きく変わる、それを提示したのがオーサグラフの面白いところだと思います。オーサグラフ式の世界地図で詳しくて大きいやつがあったらそれを買って旅程を立ててみたいものです。
流石に地図学を一晩でまとめきることはできませんね。とりとめもなくなってきましたが、地図について調べてたら夜が明けてしまいました。昨今当然のように蔓延しているグーグルマップを疑って、自分の地図を拡張していくこと。ベッドから玄関への縮尺を訂正すること。私の世界一周旅行はそこから始めようと思います。