大森靖子 『歌謡曲』 叫ぶ弦楽器の様に

歌になるギリギリの叫びにのって踊る

雨音の気持ち良い夜はひんやりとした空気と吸いながら窓辺に座って音楽を聴きたくなります。

基本的に好きなアーティストがいるとかではなく曲で気に入ることが多いのと、他の人の感想見にいって自分が気に入ってる曲の感想が短かったり他の曲に対しての熱量に差があったらちょっぴり寂しくなってしまうというのもあるので、音楽の感想は曲単位で書いていこうと思います。とはいえ最近はこの曲きっかけで大森靖子さんの曲全部聞くくらいはまってるんですけど。

というわけで今夜は彼女の『歌謡曲』という曲を紹介させてください。

 

 

やわらかくして フライパンのままでかきこんだ

遅すぎる朝 終わってる 終わってる始まり

窓の天気をつぶやいて

おまえは晴れたか

この歌い出し、のっけから共感度MAXというか、耳に入った瞬間に自分の日常のワンシーンがリフレインしました。会社を辞めて結構長いこと独りで機械的にご飯をつくって食べて排泄して寝るみたいな日常が続いていて、そのタイミングだったから尚の事そう感じたのかもしれません。特にやることも無いとなるとちゃんとした時間に起きてちゃんと寝るってことが難しくて、唯一の社交性の窓口がTwitterだったりするわけです。旧友は皆働くなりして私抜きで賑やかに生きているわけですから、私の何も起きない日常をわざわざ「聞いて!」と振り向かせて話すでもなく、ただ誰かがもしかしたら見てるかもね~くらいのスカスカな交差点でかろうじて共有できそうなどうでもいい瞬間を切り出してみせるのです。歌詞の全てを歌手の意図通りに感じてるわけではないとは思いますが、それぞれの言葉が映画のモンタージュの様に自分の脳内で映像化されるような、そんな感覚のする歌詞です。この曲から大森靖子さんの他の曲も聴いてみたりしたのですが、結構くだけたフレーズセンスをしていて、印象的な言い回しがネットでミームになるデジタル世代には刺さりやすい歌詞が多い気がします。ご本人も歴史資料になりたい願望があるとニュースのインタビューでおっしゃっていたので、意識的になさってるんでしょうね。

この曲を初めて聞いたのは久しぶりに外へ出た日の中野ブロードウェイでした。その時は歌い方がもはや叫んでるサビが耳について、なんだこの曲? って感じでした。流石サブカルの聖地、流してる曲もそれっぽいのな、といった感じで。でも何故かもっと聴いていたい気分になって、その場でShazamを起動しました。全然アプリが曲を判別してくれなくて仕方がなくまんだらけをウロウロしながら歌詞を聞き取って検索しようとしました。でも曲を特定できるほど歌詞を聞き取れなくて、その次に流れた『鮪漁船のうた』の歌詞でようやくこの歌手が大森靖子って名前だということにたどり着き、それから『歌謡曲』を見つけ出しました。一般名詞なので、ちょっとググラビリティ低めですね。これがこの曲を知るに至った経緯です。

何よりサビの歌い方が印象的で、最初聞いた時はこれはライブ版でアレンジ効かせまくった結果なのかな、と思ってました。まさかこれが正しい歌い方だったとは。そもそも大森靖子さんは弾き語りを中心に色んな場所に飛び込んでライブするスタイルで知名度を集めていったそうで、音楽はCD収録して正しい1つの音源があるもの、というよりはパフォーマンスとして会場の人とその場で共有する刹那的なものとして捉えているのかもしれません。ともすれば聞き苦しくなってしまうような叫びの歌唱は、なんだか演劇的な世界観の広がりを感じさせます。この曲を聴いてふと Ludovico Einaudi の “DNA”という曲が重なりました。それはピアノとチェロの器楽なのですが、ピアノの旋律に対してチェロが甲高くか細く泣き出しそうな音を奏でる部分があって大好きな曲です。言葉にしきれない感情や情景を描き出すために出せる音の限界を出そうとする感じが好きなのかもしれません。耳あたりの良いピアノの旋律に生々しい歌声が乗り、聴いてる人はそれに自然と身を揺らす、たった5~6分の間だけ、同じ空気を吸ってわずかなすれ違いを許容しながら同じ世界に浸る、きっとこの曲は生で聴くべき曲なんだろうなぁとも感じました。THEピンクトカレフとピアノのライブ映像しか YouTube にはなく、そのTHEピンクトカレフは解散してしまったそうですが、ギターの弾き語りライブでもこの歌って歌われているんでしょうか? YouTube や Apple Music で聴いただけっていうのはもったいないと思うので、いつかライブに行きたいなぁと思います。お金落とす身分になりたい。

今更大森靖子さんについてのことを書いても他にもっと熱心なファンの方がより深く感想を書いていると思いますし、紹介するまでもないとは思ったのですが、まあ気に入ったものを感じたままに垂れ流すブログですので、ここまで読んでくださった方には感謝しつつ、もし聴いたことがなかったならぜひ聴いてみて欲しいなと思います。私はハマりました。

 

THEピンクトカレフでの『歌謡曲』。こっちもかっこよくて好きです。生で聴いてみたかった……。いつも好きになるバンドは既に解散してたりするので残念です。ただ大森靖子さんは出産後も活動しているので、これからも追いかけていきたいです。

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